リオデジャネイロのみならず、ブラジルのシンボル的存在にもなっている「コルコバードのキリスト像」。しかし、実はブラジルで作られたわけではないということをご存知でしょうか?
同時に、「あんな大きなものがなぜ山の上に建っているの?」「どうやって建てられたの?」と疑問に思う方も多いはず。そこでこの記事では、リオデジャネイロに留学経験のある僕が、キリスト像が建てられた意味や歴史を詳しく解説していきます。
- 「コルコバードのキリスト像」の基本情報
- キリスト像をデザインしたのはフランス人彫刻家
- リオデジャネイロのキリスト像が建てられた2つの理由
- 現代におけるキリスト像の役割
キリスト像への具体的なアクセス方法が知りたい方は『【リオデジャネイロのキリスト像】行き方や値段を元在住者が比較解説』を併せてご参照ください。
リオデジャネイロのキリスト像の観光情報
リオデジャネイロの象徴として描かれる「コルコバードのキリスト像」。リオデジャネイロに行ったことがある方はもちろん、そうでなくても一度は目にしたことがあるのではないでしょうか?「リオデジャネイロ:山と海との間のカリオカの景観群」として2011年には世界遺産にも登録されており、リオデジャネイロ観光には絶対に外せないスポットです。
リオデジャネイロ「コルコバードの丘」に建てられたキリスト像
キリスト像は、標高710mとリオデジャネイロ市内で最も標高が高い「コルコバードの丘」に建てられています。コルコバードの丘は海にも程近いことから、360度のパノラマビューを楽しめるのが大きな魅力。
コパカバーナ、イパネマ、マラカナン、サンボードロモ(サンバ会場)といったリオの観光名所を一望することができます。同時に、リオデジャネイロの街を歩いていると至る所からキリスト像を目にすることができます。
ポルトガル語ではCristo Redentor(クリスト・ヘデントール)と呼ばれ、「罪の贖い主」という意味を持ちます。
リオデジャネイロのキリスト像の大きさはビル15階分
キリスト像と言えば、やはり規格外なスケールが大きな特徴の一つ。高さは39.6メートル、幅は30メートル、重さはなんと635トンもあります!
高さ39.6mは、だいたい15階建てのビルに相当するよ!鎌倉の大仏が13.35mだから、ちょうど3倍くらい。
リオデジャネイロのキリスト像はどうやって作られた?
ここまでお読みになって「高さ約40mのキリスト像を、標高710mのコルコバードの丘にどうやって建てたの?」と思われる方が多いのではないでしょうか?実際、キリスト像は稀有な建築であることから「新・世界七不思議」にも登録されています。ここからは謎を少しずつ紐解いていきましょう。
リオデジャネイロのキリスト像はフランス人彫刻家がデザイン
キリスト像の設計には、実に多くの彫刻家や建築家が携わりました。意外とブラジル人は少なく、ヨーロッパ人を中心に設計されたというのも特徴です。
- 全体のデザイン:ポール・ランドウスキ(ポーランド系フランス人の彫刻家)
- 顔のデザイン:ゲオルゲ・レオニダ(ルーマニア人の芸術家)
- 設計:アルベルト・カコー(フランス人技師)
- 設計:エイトール・ダ・シルバコスタ(ブラジル人技師)
- 最終デザイン:カルロス・オズワルド(イタリア系ブラジル人の画家)
フランスで制作されたリオデジャネイロのキリスト像
キリスト像のデザインは、まずフランスにあるラウンドスキ(彫刻家)の工房で作成されました。まずは高さ4mの縮小版を作成し、その後パートごとに制作を開始。
完成したパートは船によって遠く離れたブラジルまで運ばれた後、コルコバードの丘の上まで慎重に運搬され、少しずつ組み立てられて完成しました。
完成までにかかった歳月は9年!かかった費用は約25万ドル、現在の価値で約330万ドル(約3億3千万円)と言われているよ。
両手を開いたリオデジャネイロのキリスト像は平和の象徴
コルコバードのキリスト像は両手を広げた姿が印象的ですが、制作の段階では他にも「磔になったキリスト像」などのアイディアがあったようです。最終的には現在の両手を広げたデザインが採用されましたが、これには「平和の象徴」としての意味が込められています。
ブラジル人に聞いたら「ブラジル人が大好きなハグのポーズで、ブラジル人の温かさを表している」という解釈もありました。
リオデジャネイロのキリスト像が建てられた2つの意味
では巨大なキリスト像は「なぜ」建てられたのでしょうか?ここからはキリスト像に込められた2つの大きな意味を解説していきます。
【リオデジャネイロのキリスト像の意味 1】アイデンティティの確立
1つ目の大きな役割は「ブラジル人としてのアイデンティティの確立」です。もともとヨーロッパ人、先住民、アフリカ系黒人という3つの人種で形成されてきたブラジルですが、1900年代に入ると世界各国から多くの移民を受け入れました。
すると必然的に「いったいブラジル人とは何か?」というアイデンティティ問題が浮上します。キリスト像完成時の大統領ヴァルガス大統領は、「ブラジル人のアイデンティティ確立」に尽力した人物で、キリスト像やキリスト教への信仰心によって国民統一を目指したと考えられます。
【リオデジャネイロのキリスト像の意味 2】ブラジル独立100周年
もう1つの意味は、ブラジル独立100周年の記念です。ブラジルは1822年に独立を果たし、ちょうど100年後の1922年にキリスト像の工事が開始されました。100周年を記念したという意味でも、1つ目に挙げた「ブラジル人としてのアイデンティティの確立」に関連してくるところがあるでしょう。
独立100年を記念して建てられたなんて、ニューヨークの自由の女神像と似ているね!
リオデジャネイロのキリスト像【現代における意味】
建立から90年近いキリスト像ですが、現代ではリオデジャネイロのシンボルとしてだけでなく、メッセージ性を持たせて活用されることもあります。
こちらは通常のライトアップ。日没が近くなるとキリスト像もライトアップされ、暗闇の中にポツリとキリスト像が浮かび上がります。
キリスト像はイベントなどがあると特別な色にライトアップされることもあります。例えば、2014年のワールドカップ開催時には、ブラジルカラーの緑と黄色に。
2020年にはコロナウイルスで混乱する世界へ向け、世界各国の国旗イルミネーションもされました。世界情勢や社会運動といった、メッセージ性を持たせることも多く見受けられます。
僕の留学中にはオバマ大統領がブラジルを訪問し、キリスト像がアメリカ国旗色にライトアップされました。
なぜ&どうやってを知ってリオのキリスト像観光を!
「コルコバードのキリスト像」はリオデジャネイロに来たら誰しもが訪れる定番観光スポットですが、こうした「なぜ」や「どうやって」を事前に知っておくと、観光が何倍にも楽しくなります。ぜひリオデジャネイロ観光の際には、この記事をフル活用してくださいね!
リオデジャネイロ旅行をお考えの方は『ブラジルのファベーラとは?絶対に個人で観光してはいけない理由』や『元在住者が教える!ブラジル観光の地域別ベストシーズンまとめ』も併せてご参照ください。
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