「ブラジルの治安は悪い」という話を聞いたことはありませんか?
確かにブラジルは世界的に見ても治安の悪い国として知られており、2014年のワールドカップや2016年のリオデジャネイロオリンピックでは、治安面が大きな懸念となりました。
しかし、最低限のことさえしっかり守っておけば、日本人でも安全に楽しく旅行できるのも事実です。
この記事では、ブラジルに在住歴がある僕が、ブラジルの治安の実態や治安が悪い理由、さらに安全に旅行するための10か条をご紹介します。「いつかブラジルに行ってみたい」とお考えの方は、今のうちからしっかりとイメージトレーニングしておきましょう!
- ブラジルの治安の悪さは日本の2455倍!?
- 治安の悪さを象徴するファベーラ
- ブラジル旅行で気を付けるべき10か条
- トラブルが起きた際の5つの対処法
ブラジルの治安は悪い?目安にすべき3つのデータ
「ブラジルの治安は悪い」ということは知っていても、具体的にどのくらい悪いのか想像することは難しいでしょう。そこでまずは、治安を知るための目安となる3つのデータをご紹介します。
データ 1:外務省の渡航危険度はレベル1「十分注意」
最も信憑性の高い『外務省』の渡航情報によると、ブラジルの渡航危険レベルは1「十分注意」( 2021年4月現在)。かつては渡航危険レベル2「不要不急の渡航は止めてください」の時期もあったため、多少は治安が改善していると言えるかもしれません。
しかし、新型コロナウイルスの「感染症危険情報」を含めると、渡航レベル3「渡航は止めてください」に。これはブラジルに限らず南米全土やヨーロッパ各地も同様のため、「治安」とは少しニュアンスも異なりそうです。
データ 2:世界平和指数ランキングは126位
イギリスのエコノミスト誌が世界166の国や地域における「平和度」を分析する『Global Peace Index(世界平和指数)』によると、ブラジルは世界第126位にランクイン。ちなみに上位TOP10 は下記の通りです。
ランキング | 国名 | スコア |
1位 | アイスランド | 1,078 |
2位 | ニュージーランド | 1.198 |
3位 | ポルトガル | 1.247 |
4位 | オーストリア | 1.275 |
5位 | デンマーク | 1.283 |
6位 | カナダ | 1.298 |
7位 | シンガポール | 1.321 |
8位 | チェコ | 1.337 |
9位 | 日本 | 1.36 |
10位 | スイス | 1.366 |
(中略) | (中略) | (中略) |
126位 | ブラジル | 2.413 |
このスコアだけを単純比較すると、日本はブラジルの約2倍「平和」ということに。この「平和」は犯罪発生率とはニュアンスが少し異なるよ!
データ 3:歩行者強盗発生件数は日本の約2455倍
『在ブラジル日本国大使館』が発表した資料によると、2020年のブラジルの首都ブラジリアにおける犯罪件数は下記の通り。
犯罪項目 | ブラジリア連邦区の発生件数 (人口:320万人) | 日本全国の発生件数 (人口:1億2600万人) | 人口10万人あたりの比率 |
殺人 | 360 | 950 | 約15.1倍 |
強制性犯罪 | 606 | 1,405 | 約16.2倍 |
歩行者強盗 | 19,641 | 320 | 約2455.2倍 |
自転車強盗 | 2,216 | 112 | 約866.3倍 |
住宅強盗 | 370 | 147 | 約96.7倍 |
ブラジルのたった一つの都市が、日本全国の犯罪件数を上回っているケースもたくさん!特に歩行者強盗は、日本の約2455.2倍という驚愕の数値です。
「ブラジルの首都はリオ、サンパウロじゃないの?」と感じた方は、『ブラジルの首都はブラジリア | リオやサンパウロでない4つの理由』も併せてご参照ください。
ブラジルの治安が悪い理由 | 貧困の象徴「ファベーラ」
アフリカや中東などは、政治情勢により治安が悪化するケースが多いですが、ブラジルの場合、政治情勢が関係していることはほとんどありません。ブラジルの治安悪化の一番の原因は、貧富の差だと言えます。
ブラジルは貧富の差が大きい
ブラジルの最大手新聞会社『Folha』が発表したデータによると、ブラジルにおける収入の分布は以下の通り。日本円にする(1レアル=20円で計算)と下記の通りになります。
人口比 | 月収(ブラジルレアル) | 月収(日本円) |
1% | 13,560~33,900 | 271,280~678,000円 |
4% | 6,780~13560 | 135,600~271,200円 |
9% | 3,390~6,780 | 67,800~135,600円 |
16% | 2,034~3,390 | 40,680~67,800円 |
20% | 1,356~2,034 | 27,120~40,680円 |
46% | 1,356以下 | 27,120円以下 |
人口の約66%、つまり3人に2人が月収2,34レアル(約40,680円)以下で暮らしている計算に。現在はブラジルレアルが急降下していることもありますが、それでもいかにブラジルに貧困層が多いかが感じられるのではないでしょうか?
ブラジルのスラム街「ファベーラ」は貧困の象徴
ブラジルにおいて貧困の象徴ともされているのが、ブラジル全国各地にあるスラム街「ファベーラ」です。ファベーラ同士による麻薬取引や銃撃戦は後を絶たず、ファベーラで育った子供たちは貧困から抜け出すために犯罪に手を染めるとも言われています。
現在はブラジルの観ツアーとしても人気ですが、個人で行くのは絶対にNG!ファベーラに行ってみたいという方は『ブラジルのファベーラとは?個人で観光すると超危険な理由』を必ず参照して下さい!
ドラッグに手を出してしまった子供が、その中毒性によりお金欲しさに強盗するというケースも。少年犯罪が多いのも、ブラジルの犯罪の特徴です。
治安が良い場所と悪い場所が分かれている
リオデジャネイロやサンパウロといった大都市圏では、治安の良い地域と治安の悪い地域が明確に分かれています。しかし両者は互いに近接しあっているケースも多く、「道を一本それたらファベーラ」ということも珍しくありません。
また、たとえ本来は治安が良い地域だとしても、観光客の多い地域では観光客を狙った犯罪が多くなる傾向にあります。
強盗するために観光客の多い街へ繰り出す人たちも。「観光客が多いから大丈夫」と気を抜いたらダメだよ!
【元在住者直伝】ブラジルを安全に旅するための10か条
ここまで読んで「ブラジルの治安やばそう」、「ブラジル行くのが怖くなった」という方もいらっしゃるかもしれません。しかし、気を付けるべきポイントを事前に知っていれば、初めての方でも安全にブラジルを旅行することができます。
ここでは元在住者の僕が実践していた10か条をご紹介するので、ブラジルへお出かけの際はぜひ参考にしてください。
- お金は小分けにして持つ
- お金の引き下ろしは銀行のATMで
- パスポートはシークレットポーチにしまう
- 歩きスマホは超危険
- ブランド品を身に付けない
- 時々後ろを振り返る
- ファベーラには近づかない
- 暗くなってから出歩かない
- 人通りの少ない道には入らない
- 日曜日はオフィス街を出歩かない
ブラジルでの治安対策 1:お金は小分けにして持つ
ブラジルで街中を歩く際は、一個のお財布にすべてお金を入れることはおすすめしません。ホテル等へ戻れる最低限のお金を、カバンや体のあちこちに小分けにして持っておきましょう。
これは万が一強盗に遭ってもすんなりとお金を出すための対策で、身を守るための方法としてブラジル人も多くの人が実践しています。
留学中は財布、パスケース、眼鏡ケース、手帳など、3~4か所にお金を散りばめていました。靴下の中やインナーの中も効果的。
ブラジルでの治安対策 2:お金の引き下ろしは銀行のATMで
ATMで現金を引き下ろす際は、銀行のATMコーナーを利用するようにしましょう。街中のATMは人目につきすぎて、強盗のターゲットになってしまう可能性が高まります。
万が一何かトラブルがあっても銀行員にすぐ相談できるよう、平日の営業時間内にATMへ行くことをおすすめします。
ブラジルでの治安対策 3:パスポートはシークレットポーチにしまう
パスポートや大金などの貴重品は、首に下げたりお腹に巻いたりするポーチなどを利用して肌身離さず保管しましょう。ブラジル人でもお腹のポーチを利用する人がいますが、強盗によってはそれを知ったうえでお腹のポーチを狙ってくることもあるため、ズボンの内側に入れるポーチなどを利用するのも便利です。
JTB商事さんのこのタイプのポーチを10年以上愛用しています。お腹周りは楽チンだし、ポケットの内側なら人目につくこともまずないから安心!
ブラジルでの治安対策 4:歩きスマホは超危険
日本では歩きスマホをしている方が多いですが、治安の悪いブラジルでは歩きスマホなど論外。「どうぞとってください」と言っているようなものです。
スマホを人前で出すだけでもリスクは高まるので、よほど必要なとき以外はカバンやシークレットポーチなどに閉まっておきましょう!もしどうしても地図をチェックしたいときなどは、お店などで立ち止まって確認するようにしてください。
知り合いは、片道15分の船の中で少しスマホをいじっていただけで強盗に目を付けられ、iPhoneを盗まれてしまいました。
ブラジルでの治安対策 5:ブランド品を身に付けない
ブラジル滞在中は、極力目立たないようにラフな格好をして出かけるのが原則。そのため、ブランド品などを身にまとって出かけるのはおすすめできません。
日本人はただでさえ「お金持ち」というイメージが強いため、ブランド品を身に纏っていたら余計にターゲットにされてしまいます。Tシャツにズボンなど、なるべく質素な格好を心がけてください。
ブラジルでの治安対策 6:時々後ろを振り返る
ブラジルで街を歩くときに効果的なのが、時々後ろを振り返ることです。これは後ろに怪しい人物が来ていないか確認するためですが、警戒心を示すことで強盗被害に遭いにくくなるというメリットもあります。
人通りの多い通りならまだしも、人通りがまばらな通りは、前だけでなく後ろもチェックするようにして下さい。
もし怪しい人影を感じたら、どこでも良いから近くのお店に入ってね!
ブラジルでの治安対策 7:ファベーラには近づかない
ファベーラツアーは観光で人気のアクティビティですが、個人でファベーラに近づくのは絶対にNGです!道を間違えた観光客がファベーラの入り口で射殺されたというケースも過去には複数報告されています。
たとえ市内のファベーラでも、縄張り意識が激しいところもたくさん。許可なく立ち入れば何されても文句は言えませんので、絶対に避けてください!
ブラジルでの治安対策 8:暗くなってから出歩かない
ブラジル滞在中は、なるべく日が落ちてからの外出は控えましょう。夜になれば当然犯罪に出くわす確率も高くなり、特に女性の一人歩きはとても危険です。出歩くとしてもホテル周辺に留め、基本的に日没前にホテルに踊ることを心がけてください。
いくら日が出ていても、早朝にホテル周辺を散歩するのはおすすめしないよ!
ブラジルでの治安対策 9:人通りの少ない道には入らない
人通りの少ない道も、犯罪に巻き込まれるリスクは高くなります。メイン通りから1本入るとすぐにファベーラという場所もありますので、基本的にメイン通りから外れることはおすすめできません。
治安の良い国であれば路地裏などを散策するのも楽しいですが、ブラジルでは人通りの少ない道は避けてください。
ブラジルでの治安対策 10:日曜日はオフィス街を出歩かない
キリスト教国であるブラジルでは、日曜日は「安息日」。リオやサンパウロのオフィス街には歩く人もほとんどおらず、怪しい人たちがウロウロと歩いています。何も知らない観光客が日曜日にオフィス街で強盗に遭ったなんてケースもしばしば。
「セントロ(中心地)」と呼ばれるエリアは平日のうちに観光し、土日はなるべく人出が多い場所へ出かけるようにして下さい。
留学中も「日曜日はセントロに近づくな」とホストファミリーに言われていました。土日は人出の多いビーチでのんびりましょう。
ブラジルの治安 | トラブルが起きた時の5つの対処法
以上の10か条を守っていても、運が悪ければ何かしらの犯罪に巻き込まれてしまうことがあるかもしれません。万が一の場合には、なんとか冷静になって以下の5つの方法を実践してください。
- すぐ近くの店に入る
- タクシーに乗る
- 絶対に抵抗しない
- 緊急連絡先に連絡する
- 現地の警察署に届ける
ブラジルでの治安トラブルの対処法 1:すぐ近くの店に入る
先ほどご紹介した通り「時々後ろを振り返る」ということは非常に効果的ですが、もし実際に誰か怪しい人が付いてきている時は、近所のお店に入りましょう。これにより怪しい人を「まく」ことができ、再び安全に歩くことができます。
僕も怪しい人影を感じた時には、薬局やファストフードなどに入っていました。
ブラジルでの治安トラブルの対処法 2:タクシーに乗る
もし周囲にお店がない時は、すぐにタクシーを拾って逃げるのも効果的です。たとえ目的地まで近かったとしても、「安心を買う」と思ってタクシーに乗り込んでください!街中のタクシーは手をあげれば停まってくれますよ。
歩いていたら近くで警察とギャングの抗争が始まり、慌ててタクシーに乗ったことがありました。
ブラジルでの治安トラブルの対処法 3:絶対に抵抗しない
もし万が一強盗にあってしまった時は、あきらめて現金などを渡しましょう。仮に大切なものが入っていたとしても、命に代えられるものはありません。抵抗したことで強盗が逆上して発砲されるというケースもありますので、絶対に抵抗してはいけません!
ブラジル人がお金を小分けで持っているのは、万が一強盗に遭った際にすぐに手渡して逃げるためだよ!
ブラジルでの治安トラブルの対処法 4:緊急連絡先に連絡する
もし強盗によってパスポートなどの貴重品を取られてしまったら、速やかに関係各所に連絡しましょう。クレジットカードはなるべく早く使用停止にするためにも、緊急連絡先を控えておくことをおすすめします。
- 警察(軍警察):190
- 警察(文民警察):197
- 救急車:192
- 消防:193
- 在ブラジル日本国大使館:(061)3442-4200
- 在サンパウロ日本国総領事館:(011)3254-0100
- 在リオデジャネイロ日本国総領事館:(021)3461-9595
- 在マナウス日本国総領事館:(092)3232-2000
- 在ベレン領事事務所:(091)3249-3344
- 在レシフェ日本国総領事館:(081)3049-8300
- 在クリチバ日本国総領事館:(041)3322-4919
- 在ポルトアレグレ領事事務所:(051)3334-1299
ブラジルでの治安トラブルの対処法 5:現地の警察署に届ける
日本の海外旅行保険に加入していれば、万が一強盗に遭っても盗られた品を保証してもらうことができます。ただし、会社によっては現地警察のによる「被害届」を提出しなければいけないケースも少なくありません。
ブラジルで「被害届」を発行してくれるのは「文民警察(Polìcia Civil)」ですので、最寄りの署へ行向かってください。困ったときにはホテルのフロントに聞けばすぐに調べてくれるでしょう。
ブラジルの治安トラブルは事前の知識で防げる
ブラジルで犯罪に巻き込まれる方に共通しているのは「日本の感覚でいる」ということです。日本は世界的に見ても安全な国であるため、私たちの防犯感覚は良い意味で麻痺しているのかもしれません。
ブラジルに行くのが初めてという方は、ぜひこの記事でご紹介した10の鉄則を守り、安全で快適なブラジル滞在を楽しんでくださいね!
ブラジルへ最大限おトクに旅したい方は『ブラジル旅行でも安心の無料クレジットカード3つだけ【元在住者が教える活用術】』をご参照ください!
コメント